2015/04/07

職場から見る風景。

午後、
一息つこうと、廊下のつきあたりにある小さいベランダに出た。
昨日久しぶりの大雨が降って空気は澄んでいたが、雨雲がまったりと広がって、グレーな風景。
職場である大学の、すぐ裏の風景だ。


すぐ手前に、古い昔風の家があり(小さい中庭を囲んでぐるりと居住スペースのある韓屋タイプ)、
はるか向こうに、北漢山の堂々とした山脈が見える。
そして、その間を遮る、アパートの工事現場。

ちなみに韓国では「アパート」とは最低5階建て以上の居住建築のことで、大抵は十数階以上の、日本でいうところの「マンション」を呼ぶ。
わたしは「日本では2階建ての木造アパートに住んでいて…」と慎ましく言ったところ、「それをアパートとは言わない」と笑われた。

話は戻って。
この辺は古い住宅地だけれども、隙間すきまに新しいアパートがどんどん出来て、モザイクのように新旧の住宅がごちゃごちゃ混ざり合っている。
よく見ると、新しいアパートは大抵、色違いのレンガ風外装の似たようなデザインなので、同じ建設業者なのだろうかと思う。

毎日毎日、工事のためにギュイーン…と歯を削るような不快な音が響いている。
その不快さのせいで、工事の風景は私にはみにくいもののように映っていた。
ぼーっと眺めていたら、真ん中の茶色い建物のあいだに、人影が見えた。
よーく目をこらしてみると、組んだ足場の上で、普段着のような格好の男性が、外壁に茶色いレンガ風タイルを一枚一枚貼っていた。

(写真をとった瞬間は、人影はちょうど奥の方に入ってしまった)

なんか、ちいさなショック。
あんな大きな音を響かせて、ばかでかい穴ほったりコンクリートを流し込んだりしてたけど、
壁のタイル一枚一枚は、職人さんが手で貼っているのか。

当たり前っちゃ当たり前の話だけど。
どんなに大きなものも、人の手がつくっているんだなあ。
と、小学生の観察日記並の感想。

古い町並みを壊して、「開発」のもとに効率的で均一で大型な建物を作る”大きな手”には、
顔がないなと思う。
現場で、タイルを貼っているあの人はどんな家に住んでいるのだろうか。などと考えてみた。

韓国では最近、家賃の急騰と分譲アパート開発+ローン金利引き下げ政策で、
住居困難者が急増するだろうというグレーなニュースが流れています。