2015/05/22

焼き肉屋でアルバイト。

日本からのご一行様を連れていった、焼き肉屋さんでの出来事。

下見がてら直接予約をしに行ったときに、店長のおばちゃんが私を見て、「あなたガイドさん?」と聞いた。
いいえ、臨時の通訳みたいなことを頼まれたんです、と答えておく。
すると「どこに住んでるの?」と畳みかけるので、なんでだろう?と思いつつも最寄りの駅を伝えておいた。(これが独身ぽいイケメンだったら電話番号もつけとくんだけど…聞かれなくても…)
おばちゃんは、ふーん…と何か考えているようすだった。

そして、ご一行様がたらふく焼き肉を食べ終えて、会計をお願いするころ、
ずっと何か言いたげだったおばちゃんは、最後にもじもじしながら、
「あの〜、週に1、2回この店に来て、日本語を教えてくれないかしら」
と言うではないか。

鍾閣(ジョンガク)の飲食店街にあるこの店はオープンしてまだ数年らしいのだけど、
予想以上に日本からのお客さんが多いのだそうだ。
中国からのお客さんに対しては、店に中国出身の店員さんが多いので、言葉の問題はないらしい。でも日本語ができる人がいない。
何か、簡単な会話でもできたら…と思って、日本語の語学教室に行ってみたのだが、
「必要な言葉を、なかなか教えてもらえないのよね〜。注文を聞く言葉とか、豚肉にしますか、牛肉にしますか、とか。」と。
…そりゃ、教室では教わらないでしょうよ。

そんなわけで、ひょんなことから焼き肉屋で「日本語を教える」アルバイト、をすることになった。
要求が要求なだけに、超初級からかなりカスタマイズした授業を行うことにした。
なので、
「おはようございます」「ありがとうございます」
などの基礎挨拶の次には

「これは、ぶたの、さんまいにくです。」「ロースいちにんまえです。」

などという言葉から教えるという…。

店長さんは人の良さそうな素朴なおばちゃんで、覚えた日本語を使ってみたいが、いつも勇気がなくてお客さんに言えないのだそうだ。

でも、日本のお客さんの方がちょっとは韓国語ができる人が多くて、
せっかく来てくれたのに、迎える側の自分が全然日本語がわからないので申し訳ない、と言う。

なんか、ちょっと感激してしまった。
もちろん明洞などの観光客商戦場では、店員がモノを売るために限定的な日本語・中国語をたたき込んでいるけれど、
おばちゃんの動機は、ちょっとでも「わかりたい」し、自分で「伝えたい」という気持ちが素朴にあるような感じがして。
言語を学ぶ動機には、「伝えたい」「わかりたい」があればそれで充分。
そんな思いのお手伝いができるなら、と、教えるのも楽しくなってくる。

というわけで、
牛肉の部位の言葉を日韓両語で調べながら、ニッチなテキストを作り。
香ばしい匂いの漂う日本語教室やってます。