2014/04/13

ハンメからの手紙。

実家の祖母(ハンメ)から、ソウルの私の家にハガキが届いた。


ハンメは就学年齢のころ学校に行けなかったので、字の読み書きがうまく出来なかった。
働ける限りを尽くして働いて、婆ちゃんになっても働き、ようやく仕事をリタイアした80歳前後になって、夜間中学校に通った。
そこで、文字の読み書きや算数やお絵描きを教わった。
夜間中学では当然最年長だったが、先生方にずいぶんかわいがってもらったらしく、学校に行ってるころ婆ちゃんは楽しそうだった…と思う。
その頃、私は実家を出ていて一緒に住んでいなかったので、じっさいどうだったか分からない。今になって、夜間中学に通っていたハンメを記録しておけばよかった、とちょっと悔やまれる。

そんなハンメが、孫を思って一生懸命慣れない手紙を書いてくれた…
という美談ではなくて、じつは私が自ら「この住所でちゃんと郵便物が届くか確認のために何か送ってくれ」と実家の妹にお願いした。すると妹が祖母に「久しぶりに何か書いたら」と勧めてみた。その結果物である。

受け取ってみるとほのぼのと嬉しく、…そしてツッコミどころも満載で微笑ましい。
「これから寒くなるからからだにきをつけて」
…これから春ですよーハンメー。それとも花冷えを心配してのことか。
詩と絵もほっこりしていいなあ、と思ったけど、右下に小さく
「ボケの花」。
…自虐ネタか?!

生まれたときから一緒に住んでいたけれど、十数年前に実家を出てしまった私が、家族の中では一番祖母に接する時間が少ない。
老人と一緒に住むというのが、ほのぼのした話ばかりではないというのは、想像に難くない。
ずっと一緒にいる実の娘である母、そして娘の婿である父が、数十年にわたる祖母との一つ屋根の下の暮らしでどんな葛藤があったかということも。
家族の大変さというものから、長い間どこか逃げてきた自分の後ろめたさが、私には実はある。

今は三人とも幸い元気に自力で暮らしているが、いつか来るかも知れない「介護」の時期をふと考えると、自分があまりにも未熟でなんにも準備ができていなくて、空恐ろしくなる。
いつになっても自分の生きることに精一杯で、親孝行も婆ちゃん孝行も、ろくにできなくてごめんねと言い訳しながらもう何年もたっている。
十分に高齢の祖母を、すでに初老な両親に任せっきりで、私は好き勝手に一人でこんなところへ来て、なにしてるんだろうなあ 
と、ハガキを見つめてぼんやり思った。