初夏の韓国は、日が長い。
6月の終わりから7月にかけては
いつまでもうすぼんやりと明るいので感覚が狂う。
ようやく夕暮れらしきものが降りてきたなあ、と時計を見ると8時半くらいだったりして、びっくりする。
好きな季節は夏だけど、そのうち初夏の夕方が一番好きだ、ということを思い出す。
真夏が始まる前。
ほのあかるい夕方7時、涼しい風が昼間の熱をさらっていく。
仕事をあがって、てくてく歩いて帰っていると、
懐かしいにおいを感じた。
畳のにおい。すいかのにおい。土や草のような、すこししめったにおい。
それは日本の初夏の夕暮れのにおいだ。
ここで感じたのは、幻聴…ではなくて幻臭(??なんと言うのだろう)のような
記憶の中のにおいかもしれない。
おろしてもらった浴衣。蚊取り線香。河原の花火。祭りのヨーヨー。
ポストカードのような型どおりのイメージが、なんともいえず胸にわいては消える。
日本の夏。韓国の夏。
同じような季節なのに、まったく違うなにか。
ここにもきっと、また違う夏の入り口のシーンがどこかにあるのだろう。
まだ見つけられてないけれど。
あかるい夕暮れ。
あちこちの店先には、プラスチックの丸テーブルとイスが置かれて
(たいがいコンビニの前には必ず設置されている)
だいぶ早いうちから、おっさんたちが缶ビールか焼酎をあおってる。
どこかで、じゅうじゅうと肉を焼くにおい。
ビアガーデンとか、わざわざ行くまでもないね。
通りにあふれて賑わう屋外飲み屋街を通りながら
真夏の到来をひそかにたのしみにしている。
(と、これを書いたのは7月のはじめだったが、7月末現在いまさら梅雨のような雨続き。)