2013/03/09

「きれいな」英語。

「Banana」「ばなーな」「No, Banana」「バナーナ」「Good!」

…という某英会話会社のCMを、覚えている方はいるだろうか。
金髪の英語のティーチャーが、日本人の学生にBananaの発音を繰り返し教えているテレビCM。
いま思うと、本当にくだらないなあ。
くだらないと言うと反論もあろうが、少なくとも日本における英語観(というのも変な言葉だけど)を顕著に表していたと思う。

アメリカ英語、またはイギリス英語が「正しい英語」で、英語を学ぶのは「正しい英語」を身につけること。
すなわちアメリカ英語、イギリス英語でない英語の発音・言葉遣いは正しくないので、直さなくちゃならない。
日本人は英語の発音が悪いので、直るまでは使うのが恥ずかしい。英語がある程度わかっても、発音がうまくできないと「私は英語が喋れる」とは言えない。

ってところでしょうか。

今、私のいるMAINSのクラスで使われている英語は完全にアジアン英語だ。
とてもひとつの言語とは思えないほど、バラエティ豊かだ。

例えば、インドネシアのダダが喋る英語は、Rを全部発音する。
「ティチャールアンダルスタンドゥヨルワルルドゥ」は、
Teacher understands your word. のことだ。ということが分かるまで、しばらくかかった。

一方、タイのジェイは、強めの子音がやわらかく消えてしまう発音だ。
「ポーギャーム」
は、Programのことだということに、何度も何度も聞いてやっと気づいた。

さらに、パキスタンのマイクの発音は…なんと言えばよいのだろうか、
口を「イー」という形にしたまま、舌を巻きながら英語を喋ってみると、近い感じになる。(むずかしい!)

ちなみに、韓国の英語はFを「パピプペポ」で発音することが多いので
staffは「ステプ」、coffeは「コピー」(しょっちゅう「複写」と間違えた)、performanceは「パポーモンス」になる。

ここにさらにモンゴル英語、ベトナム英語、ビルマ英語、バングラデシュ英語…が入り乱れるのだ。
この文頭にああ言っておいてナンだけど、英国仕込みのチョ教授のクイーンズ・イングリッシュが聞きやすいったらなかった…。

正直、最初はいらだった。いらだつのはお門違いなのは分かっているが、タダでさえ英語がプレッシャーになっている私だ。「何言ってるのかわかんないよー!」と、理不尽ないらだちに苛まれた。
「もっと『きれいな英語』で喋ってくれたらいいのに」
と、口にはしていないけど、そんなつぶやきが胸に湧いて、あれっと思った。
きれいな英語って、何?
自分にとって耳馴染みのある英語は聞きやすい英語であって、それが、必ずしも他の人の耳にとっては耳に馴染んでいるわけじゃない。どれが、きれいな英語なのか。
(もちろん、音楽的な音としてきれいと感じるかどうかはあると思うが、それは感性の問題だとみる)

そもそも何でアジア各国から集まって共通語が英語なんだよ、という「そもそも」論はいつも心にひっかかるが、今となっては「しゃーなしやで」という感じで、ここでもみんな英語を使う。
その分、英語はあくまでも伝える道具だ。
その目的において、みんな実にぞんざいに、自由に、英語を(ある意味)「使い切る」。
アール(R)であろうとエプ(F)であろうと、過去現在未来形がごっちゃであろうと、とにかく自分の持っている語彙を最大限使って、伝える。
聞く側は最大限の想像力を駆使して、噛んで呑みこむ。
(まあ、もちろん会話やディスカッションに関しては、だけど。論文はそうはいかない)

不思議なもので、慣れてくるとキャッチできるようになるものだ。
なので、新しい学生課担当者が、われわれの強い英語にしばし「?」となっていたときに、クラスみんなして「いまのは○○って言ったの!」とリピートしてあげていた。
あ、やっぱみんな慣れてきたから分かるのね。そして慣れない人には分かんないものなのね。と思った。

残るは、わたし自身の基礎的な英語力の問題だ…。これは、思ったよりも…ひどいぞ。